IUU漁業対策フォーラム

日本の持続可能な漁業について考える
「東京サステナブルシーフード・シンポジウム2018」レポート

2018年10月、83年間「日本の台所」として親しまれ、近年では観光スポットとしても人気を博していた築地市場は役目を果たしてその歴史に幕を閉じた。新たな東京都中央卸売市場である豊洲市場は温度を適切に管理できる閉鎖型施設になることで、商品を高温や風雨の影響から守り、鮮度を保つコールドチェーンを実現し、国際水準の先進的な市場として生まれ変わり「豊洲ブランド」として世界に羽ばたこうとしている。
一方で、日本の水産資源量や漁獲量は減少傾向にあり深刻な問題となっている。日本の豊かな魚食文化や海洋生態系を未来に伝承するために、持続可能な生産(漁獲・養殖)に加え、加工・流通・販売過程の透明化やトレーサビリティの確保を担保するシーフードこと「サステナブル・シーフード」への注目が高まっているのはご存知だろうか。

写真提供:東京都中央卸売市場

2018年11月1日(木)にサステナブル・シーフードを社会に広めていくことを目的とした「東京サステナブルシーフード・シンポジウム2018 〜魚から考える日本の挑戦〜(日経ESG、シーフードレガシー主催)」がイイノホール(東京都)で開催された。このシンポジウムは2015年から毎年開催されているアジア最大級のサステナブル・シーフード・イベントだ。今年は国内外から65名の登壇者と500名強の来場者が集まる中、3つのトークセッション、5つの基調講演、12のパネルディスカッションが繰り広げられた。その中で、IUU漁業対策フォーラムが注目したいくつかの講演を紹介しよう。

基調講演「資源評価や資源管理の強化、IUU対策」
長谷 成人 氏(水産庁 長官)

日本はかつて世界に冠たる水産大国だったが、この30年で資源量が減少。ピーク時の漁獲量と比較して半分以下になった。その主な要因として、気候変動の影響や日本周辺で外国船の操業が活発化していること、日本が本格的な人口減少時代・高齢化時代に入ったことなどが考えられる。資源管理の脅威となる具体例として、近年日本海大和堆以北やその西側の九州・山陰で外国船による操業が確認されていることなどを挙げた。こうした背景を踏まえて、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させることを目指し、現在日本政府は水産改革を進めている。資源管理の形態については、従来の漁船数や漁船の大きさを主体に資源管理する「インプットコントロール」ではなく、漁獲量といった数量管理の「アウトプットコントロール」に重点を置いて資源管理を行っていく必要があることを提示した。また、IUU漁業対策として外国船の違法操業の取締を強化しつつ、国内においては漁獲日時、漁獲場所、漁獲量、漁獲者、漁法、水揚げ漁港、出荷先などの情報を記録・証明する「漁獲証明制度」を整備して、正確な漁獲量の把握や資源管理を徹底するとともに、違法な漁獲や取引を防ぐことを目指し、ICT等を活用してトレーサビリティの取組を推進することを紹介した。日本周辺の優良な漁場の資源を底上げしていくにあたって、日本の土壌にあったやり方で資源評価・資源管理・IUU漁業対策の強化を進めていきたいと語った。

トークセッション1「水産物のトレーサビリティと社会問題」

午前の部に行われたトークセッション1では、「水産物のトレーサビリティと社会問題」をテーマにパティマ・タンプチャヤクル氏(労働権利推進ネットワーク基金 ディレクター)、トバイアス・アギーレ氏(フィッシュワイズ 代表取締役)、ファシリテーターとして花岡 和佳男氏(シーフードレガシー代表取締役)が登壇。パティマ氏は東南アジアの水産業での奴隷問題解決に取り組み、過去にノーベル賞候補にもなった経歴があり、トバイアス氏は水産業界における企業、財団法人、行政、NGOのリーダーと海洋保全に向けた協働体制を構築し、グローバル規模でサステナブル・シーフードのムーブメントを推進している。両登壇者がプレゼンテーションを行い、過剰漁業、奴隷労働などの社会問題での観点から水産資源の持続的な活用について議論が行われた。日本が輸入する水産物も、サプライチェーンがまだ不透明であることから、奴隷労働由来の漁獲物である可能性も否めない。多岐に渡るサプライチェーンの全体像をマッピングしてリスクの高い領域を把握し、取組の優先順位を決めることが大事であるとパティマ氏が述べた。こうした社会問題の観点からも水産物のトレーサビリティ確保が必要であることが浮き彫りとなった。

午後にはIUU漁業対策フォーラムの加盟団体・企業から3名がトークセッションに参加。ザ・ネイチャー・コンサーヴァンシーのマルタ・マレーロ・マルティン氏がファシリテーターを務め、WWFジャパンから三沢 行弘氏、GR Japanから小谷野 祥浩氏が参加。食品需給研究センター 酒井 純氏、フィッシュワイズ トレーシー・リンダー 氏と共に「違法漁業撲滅とトレーサビリティ確保」をテーマにプレゼンテーションを行った後、議論が行われた。IUU漁業対策フォーラムの事務局を務めるGR Japanは、岩手県でのアワビ密漁の実態や、海外での違法・無報告由来のイカ輸入による国内イカ産業への経済被害の推計研究などを紹介し、IUU漁業が日本人にとっても大きな問題であると語り、IUU漁業対策の1つとして具体的なトレーサビリティ制度の提案をした。

写真提供:株式会社シーフードレガシー

日本の豊かな水産資源や魚食文化を未来に残すためには、政府とビジネスが共に持続可能な漁業を担保する対策を取ることが必要不可欠であることを「東京サステナブルシーフード・シンポジウム2018」を通して、再認識することができた。IUUリスクの高い水産物の輸入をまず規制すると共にトレーサビリティ制度を国内で確保する仕組み作りなど、課題はまだまだ沢山あるのが現状である。現在進められている水産改革の一環として、こうしたIUU漁業対策も合わせて図られるよう、IUU漁業対策フォーラムも提言し続けていきたい。

東京サステナブルシーフード・シンポジウム
http://sustainableseafoodnow.com/

株式会社シーフードレガシー
http://seafoodlegacy.com/


2018/12/14