IUU漁業対策フォーラム

水産資源における持続可能な消費社会の形成づくりに取り組む学生たち
―日大商学部 秋川ゼミナールの学生たちが消費者に伝えたいメッセージとは―

日本の水産資源の約80%は減少傾向にあるという事実(「水産庁 我が国周辺の資源水準状況及び推移」2017年11月)から「ひょっとしたら将来、魚が食べられなくなるのでは?」という危機感をもった日本大学商学部の学生たちがユニークな取り組みを行っている。

左から秋川卓也先生、田中秀幸さん、山下莉奈さん、安藤令華さん、田中雄貴さん(欠席:小林真子さん)

日本大学商学部の秋川卓也准教授のゼミナールで物流を学ぶゼミ生たちは、持続可能な漁業をテーマにしたオリジナルのカードゲームを開発した。自らを「Team Sath-tena(チーム サステナ)」と名付け、手作りのウェブサイトやFacebookページの運用を行うほか、大型ショッピングモールやオープンキャンパスで一般の方を対象にしたカードゲーム体験会を開催。消費者が自身の消費行動を意識的に変えることで魚を未来に残す買い方があることをカードゲームを通じて伝える啓発活動と共に、アンケート調査によるゲーム体験後の消費者の意識変化について検証を行っている。

Team Sath-tenaの活動について熱く語る学生たち。

では、なぜ流通を学ぶ学生たちがこのような活動を行っているのだろうか。そこにはメンバーの身近な体験がきっかけになったのだという。
研究テーマとして社会問題を取り上げたいと、約60個のテーマをピックアップした中から水産資源の枯渇が身近な問題であると気づき、研究テーマとして採用することになったのだ。「食卓に並んだサンマを見て最近のサンマは小ぶりだし高価になっていると母が話していたことを思い出しました」
「水産資源の枯渇の主な原因としては気候変動と過剰漁獲が挙げられると思います。消費者の需要が増して安さを求めれば、流通業者は安く大量に仕入れなければならなくなります。その結果、漁師は大量に漁獲せざるを得ません。これがIUU漁業という問題にも繋がります。このまま放っておくと、もしかしたら今のように気軽に魚を食べることができなくなるかもしれません」
では、どうすれば過剰漁獲を防ぐことができ、私たちはこの先もずっと魚を食べることができるのだろうか。
「こうした現在の危機的水産資源状況とその資源状況に応じた理想的な水産消費の形について一般の方にもっと興味を持ってもらいたいと思いました。本来なら実際に漁業を体験してみて、小さな魚しか獲れなかった。などという実体験をしてもらうことが一番ですが、現実的ではありません。そこで、漁業を仮想体験してもらうためのツールとしてカードゲームを作ることにしました」

左:チームまとめ役の田中秀幸さんは自らの体験に基づいたこのプロジェクトへの想いを話してくれた。
右:PCでゲームのルールを説明する安藤令華さん。実際に一般の方に体験してもらうときも同じように説明しているとのこと。

実際にゲームを体験させてもらったが、実に良く考えられている。プレーヤーは4人1組になり全員が消費者になる。ゲームの勝敗は先に15匹魚を購入したプレーヤーで決まる。まず、「サステナ」という掛け声に合わせて、プレーヤーが手に持っている魚の購入カードを同時に見せる。購入の仕方は2通りあり、往来通りの「普通の魚」を買うか、海のエコラベル(MSC認証)がついた「持続可能な魚」を買うかである。「普通の魚」を選んだ場合は漁獲方法等が不明であるので、デッキに予め置いてある漁獲情報にまつわる「ストーリーカード」を1枚引き、どのように漁獲されたかを確認する。ゲームは太平洋、大西洋、インド洋と3つの主な漁場から漁獲された「枚数の限られた」魚を獲る仕組みになっている。「普通の魚」を選んだ場合、「ストーリーカード」が「大きな網で魚の群れを一気に漁獲。太平洋から4匹」といった具合になり、消費者の意思に関係なく、魚をインド洋から購入することになる。「MSC認証」がついた魚である場合、消費者がどの漁場から獲るかの決定権が与えられ、1匹獲ることができる。プレーヤー4人全員が順番に魚(カード)を購入した後は、各漁場での魚カードが2枚追加される。資源回復量のようなものだ。これを繰り返していく。魚が1つの漁場からなくなってしまった場合はそこでゲーム終了。その場合、ゲームはポイント制で「普通の魚」を買った人はマイナスポイントをつけられる。最後にポイントが一番低いプレーヤーが敗者となるため、ゲームが終わってしまった場合、「普通の魚」を選び続けると負ける確率が高くなる。又、計15枚の魚カードを集めるのに「普通の魚」カードで多くの魚を買うことができるが、資源量が極端に減るため海から魚がいなくなる可能性が高くなり、ゲームが終了しやすい。MSC認証の魚だけ使おうとしてもゲームは成り立つが、1枚ずつしか買えないため、なかなか15枚集まらない、といったロジックになる。うまく持続的に購入しながら15枚の魚の購入を目指してプレーするのが鍵といったゲームだ。
実際ゲームをやってみると、プレーヤーの大半または全員が「裏切って」自分勝手な買い物をする(普通のカードを選ぶ)と資源がすぐに枯渇してゲームそのものが継続できなくなってしまって、他のプレーヤーにも迷惑をかけてしまうケースがみられた。しかし、勝負である以上「自分だけ先に沢山買ってしまおう。最初なら大丈夫」という下心が出てしまい、それが裏目に出て何度も負けてしまうプレーヤーも多かった。一方、資源が枯渇しないように上手に買うと一度に手に入る魚の量は少ないが、資源の回復とのバランスを保っているため、持続的に魚を手にすることができた。
そのカギとなるのが「海のエコラベル(MSC認証)」がついた魚(カード)を使うことであり、プレーヤー皆がうまく「海のエコラベル(MSC認証)」を選んで購入し続けると、ゲーム(つまり漁業)が継続でき水産資源が潤い、最終的にうまく購入選択したプレーヤーの勝利に繋がるというものだ。

自分たちで作ったカードゲーム「Loser of Loser」で遊ぶ学生たち。

「このゲームを通じてより多くの人たち、特に現在魚を購買している親の世代や将来の消費者になる子供に、水産資源は限られていて、現在危機的状況にあることと、持続可能な消費の形と海のエコラベル(MSC認証)の存在を知ってもらい、献立を考えるときや買い物をする時に思い出してもらいたい。消費者が現在の資源状況の当事者であるということが、認識されればこの問題を解決できるのではないでしょうか。」

左:ゲームで使用するカードの一部。「海のエコラベル(MSC認証)」がついたマグロを購入するのが勝利への近道だ。
右:「海のエコラベル(MSC認証)」がついていないマグロを買った場合は「ストーリーカード」に記載された量の魚を獲らなければならない。中にはIUU漁業問題を題材にしたストーリーもある。

このゲームを通じて「Team Sath-tena」が伝えたいメッセージは消費者に必ず届くことだろう。例えば、教育機関に環境教育の教材として取り入れたりして、もっと多くの人にこのゲームを体験してもらうことができれば、私たちはこれからもずっと魚がある食卓を楽しむことができるかもしれない。

国内外の規則を遵守せずに行うIUU漁業は、世界の持続可能な水産資源管理を妨げ、正規の漁業者を不公平な競争にさらすものとして大きな国際問題になっている。こうしたIUU漁業対策を撲滅していくにあたって、1つの有効なツールとして今回紹介した消費者の購買行動が挙げられる。消費者が購入する水産物がどのようにどこで漁獲されたかなど、興味を持って消費することが重要だ。しかし、こうした情報は未だ不透明であり、現在スーパーに行って魚を見ても、MSC認証がなければ持続可能なのか、正規に漁獲されたものなのか見分けがつかない。そこで、水産物の漁獲情報の伝達を義務付ける「トレーサビリティ」を国内で確保することで、消費者が「正規の水産物」を購買できることを担保する枠組みも必要である。 IUU 水産物の輸入規制と同時にこれから日本も対応していくべきなのではないだろうか。

日本大学商学部ウェブサイト
http://www.bus.nihon-u.ac.jp/

「Team Sath-tena(チーム サステナ)」ウェブサイト
https://team-sasutena.jimdofree.com/

「Team Sath-tena(チーム サステナ)」Facebookページ
https://www.facebook.com/mizumizu.fish


2018/11/05